
■非鉄金属株にM&Aの思惑人気が再燃した。米アルミ大手のアルコアが7日、カナダの同業アルキャンへの敵対的買収を明らかにしたことをきっかけに、日本軽金属<5701>や住友軽金属工業<5738>のアルミ株のほか、住友金属鉱山<5713>などアルミ関連以外の非鉄株にも買いが流入している。 ただ、市場ではこの業界が世界的な再編の渦に巻き込まれる可能性が低いとの見方が一般的だ。そうした中、海外の非鉄メジャーから食指が伸びるといった現実味があるのは、卓越した精錬技術を持つとされる住友金属鉱山とみる関係者が多い。
アルコアは7日、アルキャンに対し約270億ドルの敵対的買収に踏み切る方針を明らかにした。約2年に及ぶ経営統合協議が決裂したため、敵対的買収に切り替えることにした。両社の統合が実現すればアルミ生産で世界最大の企業が誕生する。 これまで東京株式市場では、世界的な大型のM&Aが話題になるとともに、国内関連業界の株価が上昇してきた経緯があり、今回もアルミ株や他の非鉄株が物色された。SMBCフレンド証券・投資情報室次長の松野利彦氏は「同じメタルでも鉄鋼や銅とは異なり、アルミは初めて出てきた大型案件のため、材料のイメージが新鮮。アルミ株はもちろん、他の非鉄株や鉄鋼株などもM&A関連株として見直されている」と指摘する。
もっとも、アルコアによるアルキャンへの敵対的買収が、日本のアルミメーカーに及ぼす影響は小さいという。アルコアとアルキャンはいずれも川上メーカーであるのに対し、日本のアルミメーカーは川上メーカーからインゴットを購入して製品を加工する川下に特化しており、その意味で関連性が乏しい。 岡三証券のアナリスト、小野まな実氏は「製品の輸送コストなど地理的要素から、国内メーカーが周辺国に輸出することは採算的に難しく、その点からも海外勢が日本のメーカーを傘下に収めるメリットは小さい。国内勢が世界的な再編劇に巻き込まれることはないだろう」と分析する。
日本のアルミメーカーは「国内ユーザーの品質要求が極めて厳しく、それが収益力を低くさせる要因になっている」(小野氏)点も海外メーカーにとって敬遠する要因になるようだ。一方、他の非鉄株についても、世界的な買収劇に巻き込まれる可能性が低いとの見方が支配的となっている。大和総研のシニアアナリスト、村田崇氏は「世界のメジャーと国内メーカーの規模が違い過ぎて、業界再編という視点から日本の非鉄会社が買収される可能性は低い。世界有数の菱刈鉱山を有する住友金属鉱山にしても、菱刈だけを狙うなら買収案件としてペイはしないだろう」と話す。市場では、アルミを含めた非鉄株の人気は、M&Aがテーマとして語られながらも、商品市況の上昇を背景とした業績向上期待に株高が支えられている側面が強いとみるのが現実的だ。
しかし、国内の非鉄メーカーの精錬技術にスポットを当てた場合、事情が異なってくる。住友金属鉱山のニッケル精錬技術や、DOWAホールディングス<5714>の貴金属回収技術は世界最高峰のレベルで、海外非鉄メジャーはもちろん、需要拡大が顕著な中国のメーカーなどが欲しがる技術という。技術を狙った買収なら起きる可能性もあるわけだ。
とりわけ、住友金属鉱山のニッケルを精錬するHPAL法に対する評価が高い。同社は、2月に発表した中期経営計画で、今後3年間にニッケル事業の拡大強化を打ち出したが、その強力な柱となるのがHPAL法だ。
HPAL法は、低品位の原料からもニッケルを回収できる技術。住友金属鉱山によると「世界で4社ほど手掛けているが、当社が最も先行している。世界的に注目されている技術」(同社広報部)という。
同社は2月に事前警告型の企業買収防衛策を導入しているが、市場ではこのHPAL法が狙われないために防御に動いたとの見方もあるほど。アナリストの間でも「付加価値が高いHPAL法がある住友鉱山ならメジャーあたりが狙う可能性もある」(大和総研・村田氏)、「HPAL法は世界的に突出したで、住友鉱山が国内メーカーでは最も狙われやすい」(岡三証券・小野氏)などの見方が出ている。(ロイター)